ブルーム(Broome (Rubibi))から200km ほど北に位置するダンピア半島(Dampier Peninsula)の先端で、風にそよぐスピアグラス(speargrass)にトンボが止まっています。ワトルズ(wattles)が咲き、黄金色の小さくて丸い花に鳥や虫が集まります。そして海には、クリーミーで濃厚なロック オイスター(rock oyster)。
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これが「バルガーナ(Barrgana)」と呼ばれる季節。半乾燥地帯の赤茶けた土が人のいない白砂のビーチや青く茂るマングローブ林へと消えていくバーディ・ジャーウィ・カントリー(Bardi-Jawi country)の乾期です。ここには先住民族の文化が、自然の呼び声に敏感に応えながら、何千年も前から変わらずしっかりと息づいています。

ルルンブのサザンクロス・カルチュラル・ウォークでガイドを務めるボーロ・アンガスさん
バーディ・ジャーウィのボーロ・アンガスさんは、ルルンブ(Lullumb)のサザンクロス・カルチュラル・ウォーク(Southern Cross Cultural Walk at Lullumb)のオーナーです。
「バルガーナは豊穣の季節です」と彼は言います。
バーディ・ジャーウィ・カントリーを巡るツアーのほとんどが再開されるシーズンでもあります。ツアーの参加者は、ボーロさんの家族が所有する海辺の地所で先祖から伝わる物語やサバイバル技術を教わり、ブッシュ・タッカーのスキルを体験します。ツアーの締めくくりには、集めた食材を使ったおいしい野外料理を楽しめます。
このツアーでは、ボーロさんがかつて祖父母と歩いた道を彼と一緒にたどります。潮の引き加減によっては、魚をヤスで突いたりノコギリガザミ(mud crab)というカニを捕ったりもします。メスのノコギリガザミは沖へ移動して産卵するそうです。いつまでも海の恵みを受け続けられるように、バーディ・ジャーウィの人々は繁殖前のメスを捕獲しないのだとボーロさんが説明してくれました。

ルルンブのサザンクロス・カルチュラル・ウォークでの野外料理
「ワトルズのさやが黒ずんで種が地面に落ちたら、メスのカニが沖でその年の産卵を済ませた頃だとわかります。この時期になったらメスのカニも捕まえてかまいません」
伝統的には、バルガーナはジュゴン(dugong)狩りの季節でもありました。
「昔の人たちは、頭に鉢巻を巻き、真珠貝の殻1枚だけの姿でこの辺りを歩き回っていたのですから」と彼は語ります。「バルガーナの夜の冷え込みを相当感じていたはずです」
バルガーナに姿を見せる移動中のザトウクジラ(humpback whale)は、ジュゴン狩りの季節が始まる合図でした。
「ジュゴンを捕獲し、その脂肪分を、バルガーナを暖かく過ごすための蓄えとしていたのです」

オーリン・サンデー・アイランド・カルチュラル・ツアーズでガイドを務めるロザンナ・アンガスさん
バーディ・カントリーはオーストラリア本土に位置していますが、沖の島々はジャーウィ・カントリーなのだとジャーウィ族のロザンナ・アンガスさんは語ります。ロザンナさんのツアー会社オーリン・サンデー・アイランド・カルチュラル・ツアーズ(Oolin Sunday Island Cultural Tours)は、1962年まで宣教地だったサンデー・アイランド(Sunday Island/Ewuny)へのツアーを行っています。
参加者が乗るのは現代のアルミ製の船ですが、ミドル・パッセージ(Middle Passage)の荒れ狂う海洋渦や世界最大級の干満差の中でも伝統的ないかだを巧みに操って進んだ先祖たちの航海を振り返ります。

オーリン・サンデー・アイランド・カルチュラル・ツアーズ
ロザンナさんによると、バルガーナは多くの木々に花が咲きハチが集まる季節だそうです。
「蜜が豊富になるので、この季節になるとハチミツを集めます。私たちはブッシュ・ハニーと呼んでいます」と彼女は語ります。
ロザンナさんが子供だった頃は、バルガーナはサンデー・アイランドでミヤコドリ(oystercatcher)など水辺の鳥のおいしい卵を探し集めるのに最適な季節だったそうです。
また、祖父のカントリーにあるムッドヌン(Mudnunn)でのキャンプを1年中楽しみにしていたことも少女時代の思い出です。
「陸のものも海のものも豊富に食べられるので、誰もがキャンプに行きたくなる季節」なのだそうです。「魚もカキもアカエイ(stingray)も、よく肥えている季節です」

ボロゴロン・コースト・トゥ・クリーク・ツアーズでガイドを務めるテリー・ハンターさん
シグネット湾真珠養殖場を拠点とするボロゴロン・コースト・トゥ・クリーク・ツアーズ(Borrgoron Coast to Creek Tours)のテリー・ハンターさんはバーディ族ですが、気持ちはロザンナさんと同じです。テリーさんは、昔からバルガーナという季節が特に好きなのだそうです。
「バルガーナの季節が始まるとトンボが現れて、そろそろイルカンジクラゲ(Irukandji)やハコクラゲ(box jellyfish)などの有毒クラゲが深い海へと去る頃だと告げるのです」とテリーさんは言います。
バルガーナになりワトルズの花が咲くと、釣りの方法を変える時期です。
「アジ(trevally)の仲間が大きな群れを作り、ボラ(mullet)も身を太らせ始めるので、岩礁に集まる魚介類を食べていたのをやめて獲物をそちらに切り替えるタイミングなのです」とテリーさんは解説します。
テリーさんによる2時間のコースト・トゥ・クリーク・ツアーに参加すると、マングローブ林を抜け、海岸線沿いを散策しながら、ブッシュフードや薬草、そして持続的な狩猟採集について学ぶことができます。ツアーの目玉のひとつは、テリーさんがスピニフェックス(spinifex)という草を燃やして、ジューシーなロック・オイスター、ピピガイ(pippi)、ザルガイ(cockle)を岩の上で焼いてくれることです。

ボロゴロン・コースト・トゥ・クリーク・ツアーズ
テリーさん自身は昔から、バルガーナに急激に涼しくなることがうれしいのだそうです。
「それまでシャツも着ずに半ズボン1枚で過ごしていた真珠養殖場の子供たちが、次の週には暖かい服を着込むことになります」とテリーさんは語ります。「寒い季節は、私たちにとってベストシーズンだと思いますよ」
(情報:2023年5月現在)